燐光りんこう)” の例文
うつくしい燐光りんこうを出す、いちめんのかわらははこぐさの上に立って、まじめな顔をして両手をひろげて、じっとそらを見ていたのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あたかも燐光りんこうに照らされ、横笛を吹いてる鬼火から森の中に投げ出されたかのような、踊りはねる鋭い次の反唱句も聞かれたのである。
紫外線がどういう物理的作用を有するかと申しますと、紫外線は多くの物質に当たりますと一種の燐光りんこう様の光を発生せしめるのであります。
紫外線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
この島の森の中を暗夜に通ると、青白い燐光りんこうが点々と地上一面に散り敷かれていて美しい。一種の菌類が発光するのだという。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
が、部屋に拡がった暮色の中には、その三毛猫の二つの眼が、無気味な燐光りんこうを放つほかに、何もいるようなけはいは見えなかった。……………
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
クリストフは燈火もつけずに、燐光りんこう性のやみの中に、ただ一人室にいて、悲痛な森の音に耳を傾け、木の折れる響きのすることにびくりとした。
先方ではとっくにこちらの素姓すじょうを見破って、張りぼての中で、燐光りんこうの眼を光らせて、せせら笑っているのではあるまいか。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
まっかなベニタケ、星のついたテングタケは恐ろしい毒物だし、夜になると燐光りんこうを発するツキヨダケというのも出る。
山の秋 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
並んだり重なり合ったりしながら、お墓のように垂直に突立っている。蒼白あおじろい、燐光りんこうの中に、真黒く、ハッキリと……数えてみると合計七本あった。
怪夢 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
えのきの古株の多年地中にうずもれしが、このごろ掘り出だされしために、燐光りんこうを放ちしものなることが判明せりとぞ。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
大きな蛾の複眼に或る適当な角度で光を当てて見ると気味の悪いように赤い、燐光りんこうに類した光を発するのがある。何となく物凄い感じのするものである。
烏瓜の花と蛾 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
敵はいずれも全身から蛍烏賊ほたるいかの如き青白き燐光りんこうを放つ。わしは幽霊かと見ちがえて、カモシカ中尉から叱られた。
二、〇〇〇年戦争 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして彼が窓辺を去って、寝床の上に横になるとき、彼は部屋のなかの暗にも一点の燐光りんこうを感じた。
ある心の風景 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
暗い所ほど美しい燐光りんこうを描いて飛びい、水辺の危ないところほど、蛍がまりのようにたかっていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてその燐光りんこうの群れは、ひっきりなしに新手が加わってふえて行く——あたかも、一日じゅう追い回され、散り散りになっていた鷓鴣しゃこの群れが、夕方、もう危険も去って
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
とおった秋の夜の空気の耳にある物が、どんな微細なものまでも皆キラキラとまばゆい燐光りんこうを発しているので、その極端な明るさが見張りの者の展望を妨げているのである。
早く早くと水と水とが押合う為めか、水面みなもに一種の燐光りんこうただよって物凄い。急に寒くなった。お母さんは乃公を確乎ぎゅっと捉えている。何程無鉄砲でも、此んな処へ飛び込むものか。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その一つ一つの墓からかすかな腐朽の燐光りんこうが出ているので、私はずっと奥の方までも眺め、そこに屍衣を着た肉体が蛆虫とともに悲しい厳かな眠りに落ちているのを見ることができた。
紀久子のその顔は燐光りんこうを浴びてでもいるように病的なほど青く、やつれてさえいた。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
どことも覚えない大溝おおどぶが通つてゐて小橋がまばらにかかり、火事の焼跡に休業の小さい劇場の建物が一つくろずみ、河沿ひの青白い道には燐光りんこうを放つ虫のやうにひしやげた小家が並んでゐる。
蝙蝠 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
全盛期を過ぎた伎芸ぎげいの女にのみ見られるような、いたましく廃頽はいたいした、腐菌ふきん燐光りんこうを思わせる凄惨せいさん蠱惑力こわくりょくをわずかな力として葉子はどこまでも倉地をとりこにしようとあせりにあせった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
その上ジャヴェルの目は、夜の鳥のように暗中にも見える一種の燐光りんこうを持っていた。彼はマリユスの書いた数行を読み分けてつぶやいた。
ごとごとごとごと汽車はきらびやかな燐光りんこうの川のきしすすみました。こうの方のまどを見ると、野原はまるで幻燈げんとうのようでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
燐光りんこうのスポットライトが、闇の中に、怪物の顔の部分を丸く浮き上らせた。舞台にはたった一点、金色のお能面の様な顔丈けが、燐光に燃えている。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
軟泥なんでいを背景として、人骨がちらばっており、深海魚しんかいぎょ燐光りんこう気味きみわるくいたり消えたりするところもとび越えて、底知れぬ岩の斜面しゃめんにそっておりていく。
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大きな蛾の複眼にる適当な角度で光を当てて見ると気味の悪いように赤い、燐光りんこうに類した光を発するのがある。なんとなく物すごい感じのするものである。
からすうりの花と蛾 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その臭い汚泥おでいの中にさえ、沼沢の上に踊る鬼火のように輝く不思議な燐光りんこうが、霊妙な眼つき、燦然さんぜんたる知力、水底の泥土でいどから発散する微細な電気が、見て取られるのであった。
時々夜鳥よどりがその中から、翼に薄い燐光りんこうを帯びて、風もないこずえへ昇って行った。……
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
まがり廊下の横合いから、サッと見えた真槍しんそう燐光りんこう、ビクリッとして飛びのくと
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ごとごとごとごと汽車はきらびやかな燐光りんこうの川の岸を進みました。向うの方の窓を見ると、野原はまるで幻燈げんとうのようでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それとも、運命強く通りがかりの船などに救われ、まだこの世のどこかの隅に、あの燐光りんこうの眼を光らせて、再度の悪事を計画しているのであろうか。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
巨象が行水ぎょうずいしているようでもある。船体からは、例の青白い燐光りんこうがちらちらとえている。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
見ると、かわ燐光りんこうのように浮出しており、角燈が眼のように光っていて、そのガラスに大きな翼の蚊がぶっつかっていた。とびらはしめられた。アーダは寝台のそばに立って、微笑ほほえんでいた。
猫いらずを飲んだ人は口から白い煙を吐くそうであるからねずみでも吐くかもしれない。屋根裏のやみの中で口から燐光りんこうを発する煙を吐いているのを想像するだけでもあまり気持ちがよくない。
ねずみと猫 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
怪物を尾行して夜ふけの寒い風に当たったためでもあったが、一つには、あのあやしい燐光りんこうに射られ、ものの魔気を感じたせいであったかもしれない。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
少し水銀いろにいたように見え、その手首にぶっつかってできた波は、うつくしい燐光りんこうをあげて、ちらちらと燃えるように見えたのでもわかりました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彼はきわめて粗野ではあったけれど、無邪気な好奇心をもち、感傷的な清い逸楽的な心をそなえていた。女の眼の中に輝くちらちらした燐光りんこう的な炎に、たやすくとらわれてしまう心だった。
雪は青白く明るく水は燐光りんこうをあげた。すばるやしんの星が緑やだいだいにちらちらして呼吸をするように見えた。
なめとこ山の熊 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ふなべりによれば、しぶきを立てる大波のうねり、船尾に帯をのべる夜光虫の燐光りんこう、目を上ぐれば、眉を圧して迫る三浦みうら半島の巨大なる黒影、明滅する漁村の燈火、そして
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
紅色と黄金色との光線が、くりの木立の下に漂っていた。燐光りんこうのような輝きが、牧場から発してるようだった。空は眼のようによろこばしくやさしかった。横の牧場に、一人の娘が刈草を動かしていた。
それでもたしかにながれていたことは、二人ふたり手首てくびの、水にひたったとこが、少し水銀すいぎんいろにいたように見え、その手首てくびにぶっつかってできたなみは、うつくしい燐光りんこうをあげて
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
燐光りんこうを放つ海蛇うみへびの水槽のほかは、皆水の上に明るい電燈がついていて、海底を模した水槽は、底の小石の一つ一つまで、ハッキリと、しかし青い鹽水しおみずの層にゆがんで、眺められた。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
電燈の届かぬ遠くの方の魚達は、その目の玉ばかりが、夏の夜の川面かわもを飛びかうほたるの様に、縦横に、上下に、彗星すいせいの尾を引いて、あやしげな燐光りんこうを放ちながら、行違っています。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
野原にはあっちにもこっちにも、燐光りんこう三角標さんかくひょうが、うつくしく立っていたのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
茶色の毛の全身が、ドス黒く血の斑点はんてんだ。顔も血みどろのブチになって、その中から燐光りんこうはなつ丸い眼が、ジッとこちらをにらんでいる。あごからは、まだポタポタと血のしずくが垂れている。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
やなぎの木でもかばの木でも、燐光りんこう樹液じゅえきがいっぱいみゃくをうっています。
イーハトーボ農学校の春 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
まったく私のてのひらは水の中で青じろく燐光りんこうを出していました。
インドラの網 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
金剛石こんごうせきがはげしくぶっつかり合っては青い燐光りんこうおこしました。