やは)” の例文
説教者の力により胸はをのゝき心は壓倒されたが、やはらげられることはなかつた。終始其處には一種異樣な苦味にがみが漂つてゐた。
かれくびにはちひさい腫物はれもの出來できてゐるので、つね糊付のりつけシヤツはないで、やはらかな麻布あさか、更紗さらさのシヤツをてゐるので。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さうしてあたらしいとはいひながら、やはらかでおだやかなよい氣持きもちをやぶらないで、上品じようひんさをちながらうたはれてあるのが、このうたなどのよいところです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
此夜彼が「梅子、相変らずの勉強か」と、いともやはらかに我女わがこの書斎をおとづれしもれが為めなり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
實際じつさいかれ退屈たいくつらしかつた。宗助そうすけかへればたゞるよりほかようのない身體からだなので、ついまたしりゑて、烟草たばこあたらしくかしはじめた。仕舞しまひには主人しゆじんれいならつて、やはらかい坐蒲團ざぶとんうへひざさへくづした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
萠えいでてやはき木の芽の或るうれは白うかがやけり花かともあはれ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
固く引締つた顏がやはらいで、美しい血潮が頬を染めます。
薄曇りたる空の日や、日もやはらぎぬ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
真白な、やはらかな、そして
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
こわざしやはきしのび
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
それに、やはらかくて同時に、生き/\としてきび/\したあの人特有のあの聲だ。それが私のしぼんだ心を明るくする。その中に生命を吹き込む。
萠えいでてやはき木の芽の或るうれは白うかがやけり花かともあはれ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
とこしへやはら浪だつそれを觸れむ
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
こわざしやはきしのび音に
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
よくれた唇に鮮紅せんこうをさすこと、豐かな髮のあちこちにやはらかな捲毛を描くこと、碧いまぶたの下の睫毛まつげにより深い影をつけることが、まだ殘つてゐた。
春ゆふべ眼に白らけゆくおきの色のものやはきかなや火桶かい
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ひはててなほしやはらとます目見まみひじりなにをか宿したまひし
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
庭石にささとむらがるひとときはやはき羽蟻もいきほひにけり
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
庭石にささとむらがるひとときはやはき羽蟻もいきほひにけり
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
玉蘭はくれんの落葉掻きめ焚く風呂のねもごろやはき湯気に立つめり
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
やはらかい草いきれの底に Lamp の黄色い赤みが点る。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
直土ひたつちの春のしめりに今朝見えてすれすれを飛ぶやはき蝶なれ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
牧ぐさのくれなゐやはきうまごやしかなし麻利耶よ彼ら夢みぬ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
数珠茅じゆずがやに夕づく日ざしやはらなり穂のまだ伸びぬ青き数珠茅
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
春すでに刈田に黒きひぢのふくらみやはしうちにほひつつ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
春すでに刈田に黒きひぢのふくらみやはしうちにほひつつ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
水落つ、たたと…………たたとあな音色ねいろやはらに
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
このやはし、小糠たつ杵
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
やはらかなる日ざしに
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
ものやは
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)