晴間はれま)” の例文
ほのぼのと夜が明け離れてから四時間ばかりたった。烏は畦の並木に止まって悲しそうな声で鳴いている。ちょうど雪の晴間はれまであった。
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あめ晴間はれまには門野かどのを連れて散歩を一二度した。然しうちからは使つかひ手紙てがみなかつた。代助は絶壁ぜつぺきの途中で休息する時間の長過ぎるのにやすからずなつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
海は益々荒れていた。厚い層雲がひくく全天を蔽い、ただ水平線の近くだけが晴れていた。その晴間はれまは、薄紫を帯びて青く光り、冷くて透明な感じに見えた。
ツンドラへの旅 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
にわか雨をさけて、のきの下や大木たいぼくかげに、立ちよって晴間はれまを待つことを、昔の人たちはヤメルといっていた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
戀々れん/\として、彽徊ていくわいし、やうやくにしてさとくだれば、屋根やねひさし時雨しぐれ晴間はれまを、ちら/\とひるひともちひさむしあり、小橋こばし稚子等うなゐらうたふをけ。(おほわた)い、い、まゝはしよ。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
始めし所或日にはか雨に逢堂前にて晴間はれままちし中無量庵むりやうあん雨舍あまやどり駈込かけこみ不※ふと種々しゆ/″\の物語より親子の名乘なのりをなしお里は今さら夢のさめたる如く後悔こうくわいして惣内と姦通かんつうせし事の始より九助をつみおとし夫よりかげ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
思ひきや霧の晴間はれまのみをつくし光りゆらめく河下見れば
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さらでもおいてはひがむものとかいはんやひんにやつれにやつれひとうらめしくなかつらくけてはなげれてはいかこゝろ晴間はれまなければさまでには病氣びやうきながら何時いつなほるべき景色けしきもなくあはれ枯木かれきたる儀右衞門夫婦ぎゑもんふうふちわびしきは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
梅雨つゆ晴間はれま絶えて久しき友きた
七百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
梅雨つゆ晴間はれまに見上ぐれば
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
翌日よくじつあめ晴間はれまうみく、箱根はこねのあなたに、砂道すなみち横切よこぎりて、用水ようすゐのちよろ/\とかにわたところあり。あめ嵩増かさまながれたるを、平家へいけ落人おちうどすさまじきたきあやまりけるなり。りてづく、また夜雨よさめたき
逗子だより (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
梅雨つゆ晴間はれまの屋根の草。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)