排泄はいせつ)” の例文
そしてふたこと、みことでいいのだ。たとえばお天気の話などでも。それはほんの一寸した精神の排泄はいせつ作用に属することなのだから。
落穂拾い (新字新仮名) / 小山清(著)
赤ん坊が生後初めて排泄はいせつする大便をカニバヽという。しかしそんな込み入ったことは英語で説明出来ない。斯ういう場合私達は
首席と末席 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ところでそうなった時に、一番困るのは排泄はいせつ物の処理である。小便の方は再生して純水をとり、それを水として使うとしても、カスが出る。
悲劇とはみずからずる所業をあえてしなければならぬことである。この故に万人に共通する悲劇は排泄はいせつ作用を行うことである。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
科学という霊妙な有機体は自分に不用なものを自然に清算し排泄はいせつして、ただ有用なるもののみを摂取し消化する能力をもっているからである。
量的と質的と統計的と (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
我々が清掃に従事しなければ市民は一体どうするつもりであるか、自分で棄てに行くか、さもなければ、排泄はいせつを停止するの外はないではないか、と
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
それが病気の加減で頭がだんだん鈍くなるのか何だか、日をるに従って、無精な排泄はいせつを意としないようになった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
米友のこの稀有けうなる心づくしが少しもわからない子熊は、食物をあてがわれる時のほか、恩人を眼中に置かず、排泄はいせつの世話まで米友に焼かせているくせに
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
……のみならず、このおびただしい排泄はいせつ物の腐れた臭ひに半ばはうもれて一万二千の小舟が動き廻り、三万余りの男女がその中に「生きて」ゐるのを私たちは知つてゐる。
水に沈むロメオとユリヤ (新字旧仮名) / 神西清(著)
消化吸収排泄はいせつ循環じゅんがん生殖せいしょくう云うことをやる器械です。死ぬのがこわいとか明日病気になって困るとかたれそれと絶交しようとかそんな面倒めんどうなことを考えては居りません。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
紋太夫は本能的に片手で防禦ぼうぎょ姿勢をとったが、千蔵はどうもしなかった。人がその躰内から一種の瓦斯ガス体を排泄はいせつするときの如く、顔をあかくして力み、歯をくいしばった。
評釈勘忍記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
竿さおをもって枝を動かせば、雨のごときものが落ちてくる。よって、その枝を折り取って検せしに、葉に虫がついてい、その虫より排泄はいせつせるものなることが分かったそうだ。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
切符内よりいたち最後屁さいごっぺの如き悪臭ある粘液を排泄はいせつし、指などに附着するときは約一週間後にあらざれば、悪臭が脱けないように製作し、よって切符を折らせない方式である。
発明小僧 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
愛憎あいそかすことが出来るであろう、と、そう思った末に考えついたのは、あのようなみめうるわしい女であっても、その体から排泄はいせつするものは、われ/\と同じ汚物おぶつであろう
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
鉱物質の六者のうち繊維は如何いかに調理するも人の胃腸中に消化せられずまた体中に吸収せられず、糞便となりて体外へ排泄はいせつせらるるものなるがその他は皆な人体の営養に必要なり。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
東方はわれわれの養分となった後に、やがてみずから排泄はいせつされてしまうだろう。ゴールの国は丈夫な胃袋をもってるのだ。二十世紀間のうちに、一つならずの文化を消化しつくした。
食べて後吐く、食べて後排泄はいせつする。先ず技法の基礎をうんと食べる必要がある。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
もし本人が咳嗽によって血液を排泄はいせつしたものであるならば血は大きな飛沫ひまつとなってたくさんあたりに飛び散り、もしまた人事不省あるいは死体となって落ちた場合には血液は口から流れて
一度自分のものとなったら、そこから出る不純物、垢は常に排泄はいせつするのです。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
うつろで架空なただの不機嫌やおびえの排泄はいせつにすぎない。
煙突 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
しりの曲がったごうなのからにでも詰め込んで丸のみにさせられていたのであったら、とうの昔に体外に排泄はいせつされてどこかよその畑の肥料にでもなっていたことであろうと思う。
さるかに合戦と桃太郎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
飯は依然として、普通のごとく食った。けれども運動の不足と、睡眠の不規則と、それから、脳の屈託とで、排泄はいせつ機能に変化を起した。しかし代助はそれを何とも思わなかった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところが米飯に焼き魚とか野菜の煮物などを食べると、栄養分になるのは四五%ないし五〇%で、あとは食べた物を消化することに費やされるか未消化のまま排泄はいせつされてしまうんだ
花咲かぬリラ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
我々が清掃に従事しなければ市民はいったいどうするつもりであるか、自分でてに行くか、さもなければ、排泄はいせつを停止するの外はないではないか、と、演説しはじめたのであったが
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
老人の「雪隠せついん哲学」に依ると、「湯殿や雪隠を真っ白にするのは西洋人の馬鹿な考だ、誰も見ていない場所だからと云って自分で自分の排泄はいせつ物が眼につくような設備をするのは無神経もはなはだしい、 ...
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
どこかに疾患があるなら、疾患を治療すればよろしいが、お上のお躯は厚味の御膳を多食なさるため、内臓ぜんたいにあぶらが溜って衰弱し、吸収と排泄はいせつの調和がまったく失われているのです
むかし吉原の或る有名な太夫は緡銭びんせんを毛蟲と間違えたふりをして上品さをてらったと云うが、大名の家庭に生れた貴婦人たちはぜにを知らなかったどころではない、自分の体から排泄はいせつする物質をさえ
排泄はいせつしながら、不思議な感傷に浸った。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
赤ん坊が分娩後に始めて排泄はいせつするあの蟹屎かにくそと云うものに似ていた。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)