打撞ぶつか)” の例文
小箪笥こだんすの上に飾つた箱の中の京人形は、蠅が一斉にばら/\と打撞ぶつかるごとに、硝子越がらすごしながら、其の鈴のやうな美しい目をふさいだ。
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ぼんやりうつむいている多津吉を打撞ぶつかったように見ると、眉はきりりとしたが優しい目を、驚いたさまみはりながら、後退あとじさりになって隠れたが。
お千さんの一枚つまんだ煎餅を、見ないように、ちょっとわきへかわした宗吉の顔に、横から打撞ぶつかったのは小皿の平四郎。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この旅館が、秋葉山あきばさん三尺坊が、飯綱いいづな権現へ、客を、たちものにしたところへ打撞ぶつかったのであろう、泣くより笑いだ。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何事なにごとも、しかし、まと打撞ぶつかるまでには、ゆみへども道中だうちうがある。つてふのではないけれども、ひよろ/\夜汽車よぎしやさまから、御一覽ごいちらんねがふとしよう。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
箱の中に飾っておきます骸骨がいこつに、ぴったり打撞ぶつかったんでございますとさ、いやではござんせんかねえ。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つんぼひがみで、昨日悩まされた、はじめの足疾あしばやな女に対するむか腹立も、かれこれ一斉いっとき打撞ぶつかって、何を……天気は悪し、名所の見どころもないのだから、とっとっ、すたすた
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
道理こそ、人の目と、そのはし打撞ぶつかりそうなのに驚きもしない、と見るうちに、ふまえてとまった小さな脚がひょいと片脚、幾度も下へ離れてすべりかかると、その時はビクリと居直いなおる。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とそつはないが、日焼ひやけのしただらけのむねへ、ドンと打撞ぶつかりさうにれらるる、保勝会ほしようくわい小笠原氏をがさはらしの——八ぐわつ午後ごご古間木こまきうてより、自動車じどうしやられ、ふねまれ
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まさか、そんな事はあるまいが、ただそこへ考えが打撞ぶつかっただけなんだよ。……
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まだおおきな箱火鉢が出ていた……そこで、ハタと打撞ぶつかったその縮緬の炎から、急に瞳をわきらして、横ざまにプラットフォームへ出ようとすると、戸口の柱に、ポンと出た、も一つ赤いもの。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
結婚はいつだ、とその後、矢野に打撞ぶつかれば、「息子は世間を知らないよ、紳士、淑女の一生の婚礼だ、引きつけで対妓あいかたきまるように、そう手軽に行くものか、ははは。」とわらいの、何だか空虚うつろさ。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まったくかも知れません、何しろ、この誓文払の前後に、何千すじですかね、黒焼屋のかめ空虚からになった事があるって言いますから。慾は可恐おそろしい。悪くすると、ぶら提げてるのに打撞ぶつからないとも限りませんよ。」
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
幼いものが、生意気に直接じか打撞ぶつかる事がある。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「私が持ちましょう、いしだん打撞ぶつかりますわ。」
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)