所々しよ/\)” の例文
さういふ潮流は暴風のときに、所々しよ/\に出来ますが、今日あるかと思へば明日なくなるといふ、頼みにならない潮流なのでございます。
うづしほ (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
取する者も無なりしにぞ長庵今は朝暮あさゆふけぶり立兼たちかねるより所々しよ/\方々はう/″\手の屆く丈かり盡して返すことをせざれば酒屋米屋薪屋まきやを始め何商賣なにしやうばい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
所々しよ/\の詩も韻文訳いんぶんやくである。「路旁生命水清流ろばうのせいめいみづきよくながる 天路行人喜暫留てんろのかうじんよろこびしばらくとどまる 百果奇花供悦楽ひやくくわきくわえつらくにきようす 吾儕幸得此埔遊わがさいさいはひにえたりこのほのいう」——大体こんなものと思へばい。
本の事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
昼の間は公爵を相手にして、所々しよ/\を訪問したり、散歩をしたりしてゐる。そして夕方になると、急いで大理石の頭の処へ行く。
クサンチス (新字旧仮名) / アルベール・サマン(著)
えだ所々しよ/\にごつた月影つきかげのやうな可厭いやいろもやからんで、ほしもない……やまふか谷川たにがはながれのぞんだおもひの、暗夜やみ四谷よツやたにそこ時刻じこくちやうど一ごろ
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
土井の二度の巡見の外、中川、犬塚の両目附は城内所々しよ/\を廻つて警戒し、又両町奉行所に出向いて情報を取つた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
水から引き上げた網の所々しよ/\に白魚が光つてゐるやうに、肌の隅々から、喜が赫き出す。そんな時には、リイケはドルフの目をぢつと見て、手を拍つて笑ふのである。
電気でんきは四ツかどいてりますのだからかすかに此方こちらうつりまする、松火たいまつ所々しよ/\にあるのでございますからハツキリとは見えませんが、なんでも旗が二十本ばかりまゐつたと思ひました。
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
突くばかりすぐに峠にて馬車の上にすくみたる足なればチト息ははづみたり此峠にいにしへは棧橋かけはしありしとか思ふに今にして此嶮岨なれば棧橋かけはしあながち一ヶ所に限らず所々しよ/\に在しならん芭蕉の
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
そこで己は君達を別荘の所々しよ/\に連れて廻つて、あすの遊びの準備を見せた。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
所々しよ/\に櫻の立木、花盛りの體なり。正面には木母寺の境内を見る。
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
本所ほんじよも同じやうに所々しよ/\出水しゆつすゐしたさうで、蘿月らげつはおとよの住む今戸いまど近辺きんぺんはどうであつたかと、二三日ぎてから、所用しよゝうの帰りの夕方ゆふがた見舞みまひに来て見ると、出水でみづはうは無事であつたかはりに、それよりも
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
と忽ち心一けつ爲し久左衞門はやがて江戸へと久八を連て下り弟六右衞門にあひて事の仔細を委敷くはしく話し頼み置つゝ歸りけりよつて六右衞門所々しよ/\
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
寒山詩かんざんし所々しよ/\活字本くわつじぼんにしてされるので、わたくしうち子供こどもその廣告くわうこくんでつてもらひたいとつた。
寒山拾得縁起 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
忍び出夜にまぎれて千住の方へと行たりけり此左仲はもと下總しもふさ銚子在てうしざいの百姓の悴なりしが江戸へ出て御旗本を所々しよ/\渡り侍士さぶらひを勤め夫より用人奉公ほうこう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
瀬田が進み出て、「我々はどこまでもお供をしますが、御趣意ごしゆいはなるべく一同に伝へることにしませう」と云つた。そして所々しよ/\に固まつてゐる身方みかたの残兵に首領しゆりやうの詞を伝達した。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
忠臣蔵に茶番の落を附けるのだから、お軽にも何か変つた長襦袢を著せたかつた。そこで所々しよ/\を問ひ合せて、とう/\緋縮緬の長襦袢の背中に大きな黄色いしみの出来たのを手に入れた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)