きっ)” の例文
君なぞも、もっと年をとってみ給え、きっと我輩の言うことで思い当ることが有るから……我輩はソクラテスで感心してることが有る。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それに聞けば課長さんのとこへも常不断じょうふだん御機嫌伺いにお出でなさるというこったから、きっとそれで此度こんども善かッたのに違いないヨ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
すれば、きっといくら遅くても帰つて来る。帰つて来ると思へばまた、瞬間でも多少の波瀾を想像しただけに、却てそれが物足らないやうでもある。
脱殻 (新字旧仮名) / 水野仙子(著)
犬では何と言って慰めていか見当が付かないので、「犬なんてものは何処どっかへ行ってしまったと思うと、飛んでもない時分に戻って来るもんだ。今にきっと帰って来るよ、」
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「いつかそういうことになる、そうなるときがきっと来る、矢っ張そうは思っておりましたが、真逆まさかこんなに早く、こうまで急にそうなろうとは。——思うと、矢っ張、夢のような気がいたします。」
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
そして、その、万善の策を採って衝突を免れ、その為め入港を遅らせた十人に一人の船長があったとしたら、きっと彼は船客の時間を空費し会社の記録を傷つけたものとして非難の的となるに相違ない。
運命のSOS (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
この人が来る時は、よく私に物をって来てくれました。この人が帰ってった後で、爺さんはきっと白銅を一つ握っておりました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「アハハハ其奴そいつは大笑いだ……しかし可笑しく思ッているのは鍋ばかりじゃア有りますまい、きっ母親おっかさんも……」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「あの人は今にきっと働くだらう。そしたらわたしの著物だつてきつと快く買つて下さる!」
散歩 (新字旧仮名) / 水野仙子(著)
しゅうとめと嫁とが一緒に成って、国の方の話を始めると、きっしまいには両方で泣いて了う。二人は互に顔を合せているのもくるしかった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
昨夜ゆうべもアレから下へ降りて、本田さんがアノー『慈母おっかさんがきくきっやかましく言出すに違いない、そうすると僕は何だけれどもアノ内海が困るだろうから黙ッていてくれろ』
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「へえ、蘭から習わせるネ」と三吉も開けてみて、「西洋画とは大分方法やりかたが違うナ——お俊ちゃんはすきだから、きっと描けるように成りましょう」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかし私の時には定屋じょうや様(地主)がおいでなさると、きっと一升買って、何がなくとも香の物で一杯上げるという風でした。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「馬鹿言え。そんなことを俺がようものなら、今日まで俺の力に成ってくれた人は、きっと驚いて死んで了う……」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
肥桶こやしおけかついだ男も畠の向を通った。K君はその男の方をも私に指して見せて、あの桶の底にはきっねぎなどの盗んだのが入っている、と笑いながら言った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「言いましたとも。もう半年も手紙を遣らないの、御恩を忘れはしないの、手紙を書く暇がないのッて、——きっと……思出していらっしゃるんでしょう」
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
よく捨吉は田辺の小父さんの家からもとの学窓の方へ歩いて帰ろうとして、そこまで来るときっと足を休めたものだ。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「シモンヌの家へ来たらきっと岡が居るだろうと思って、寄って見た——果して居た」とその画家が言って笑った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
正太が一つ場所ところに一週間居ると、きっともうそこには何か持上っている——正太はお俊にまで掛った——こんなことまで豊世はお雪に話して行ったとかで。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「千村君の居る頃には、懐郷病ホームシックの話なぞもよく出ましたっけ。『お前が西洋へ行ったら、きっと懐郷病にかかる』と言われて来たなんて、そんな話も有りました」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
まあ、貴方のところでは、どうしてこんなに御子さん達が……きっと御越に成る方角でも悪かったんでしょうッて、大屋さんの祖母ばあさんがそう申しますんですよ。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
始めて奉公に上りました頃は、昼は働に紛れても、枕に就くときっと柏木のことを思出すのが癖になって、「御母さん、御母さん」と蒲団ふとんのなかで呼んでは寝ました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あの車の形した草が生えているような土手の雪間には、きっと「青はこべ」もいのたくっている。「青はこべ」は百姓が鶏のひなにくれるものだと学校の小使が言った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
岸本が彼女に忸々しく仕向けたことは、きっとその同じ仕向けでもって、彼女はそれを夫にむくいた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
先刻さっき誘いに来た時に断りましたら、今度は鞠ちゃんの方から出掛けて行きました……きっ喧嘩けんかでもしたんでしょう……石などを放って……女中でも子守でもこの辺の女は
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「御祈祷して御貰い成すったら奈何いかがです——きっと方角でも悪かったんでしょうよ」
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)