“媼(ば)” の例文
道理(だうり)こそ、出入(でい)りを人(ひと)に隱(かく)して形(かたち)を見(み)せぬと、一晩(あるばん)お媼(ば)さんが注進顏(ちうしんがほ)で、功(てがら)らしく言(い)つた事(こと)を覺(おぼ)えて居(ゐ)る。……
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
お媼(ば)さんが突掛(つっか)け草履で、片手を懐に、小楊枝を襟先へ揉挿(もみさ)しながら、いけぞんざいに炭取を跨(また)いで出て、敷居越に立ったなり、汚点(しみ)のある額越しに、じろりと視(み)て
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とニヤリと口を開けた、お媼(ば)さんの歯の黄色さ。横に小楊枝(こようじ)を使うのが、つぶつぶと入る。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いらっしゃい。」と……水へ投げて海津(かいず)を掬(しゃく)う、溌剌(はつらつ)とした声なら可(い)いが、海綿に染む泡波(あぶく)のごとく、投げた歯に舌のねばり、どろんとした調子を上げた、遣手部屋(やりてべや)のお媼(ば)さんというのが
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こんな事(こと)からお媼(ば)さんも、去年(きよねん)……其(そ)の當座(たうざ)、かりに玉川(たまがは)として置(お)く……其家(そのいへ)の出入(ではひ)りに氣(き)を着(つ)けたやうだつたが、主人(あるじ)か、旦那(だんな)か知(し)らず、通(かよ)つて來(く)るのが、謹深(つゝしみぶか)く温(つゝ)ましやかな人物(じんぶつ)らしくて
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
臺所(だいどころ)の狹(せま)い張出(はりだ)しで、お媼(ば)さんは日(ひ)が暮(く)れてから自分(じぶん)で行水(ぎやうずゐ)を使(つか)つた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「媼(ば)ン媼(ば)が、なあえ、すぐに帰って、ござれとよう。」
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)