まぶ)” の例文
「そんなけちじゃアありませんや。おのぞみなら、どれ、附けて上げましょう。」と婦人おんなは切の端に銀流をまぶして、滝太郎の手をそっと取った。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わたし乳首ちゝくび苦艾にがよもぎまぶって鳩小舍はとごや壁際かべぎは日向ひなたぼっこりをして……殿樣とのさま貴下こなたはマンチュアにござらしゃりました……いや、まだ/\きゃしませぬ。
それに答える代りに、チチコフは薄焼ブリンを三枚いっしょに丸めて、それに溶かしたバタをべっとりまぶして口の中へ押しこむなり、ナプキンで唇と手を拭った。
火藥をまぶした觀世撚を、小さい穴へ差し込めば宜い、その先へ長くて丈夫で品の良い線香を立てた。
笈摺おいずるも古ぼけて、旅窶たびやつれのした風で、白の脚絆きゃはんほこりまぶれて狐色になっている。母の話で聞くと、順礼という者は行方知れずになった親兄弟や何かを尋ねて、国々を経巡へめぐって歩くものだと云う。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
例之たとへば午、吸物摘入、小蕪菁こかぶ、椎茸、平昆布、大口魚たらなます、千六本貝の柱、猪口はり/\、焼物生鮭粕漬、夕、吸物牡蠣海苔、口取蒲鉾卵橘飩きんとん青海苔をまぶしたる牛蒡鯛の小串、刺身比目魚ひらめ黒鰻まぐろ
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
溶かした砂糖で固めたりまぶしたりされているばかりでもなかった。
火薬をまぶした観世撚かんぜよりを、小さい穴へ差し込めば宜い、その先へ長くて丈夫で品の良い線香を立てた。