むかつ)” の例文
いま弦月丸げんげつまるしておな鍼路しんろをば故意わざ此方こなたむかつ猛進まうしんしてるのである、一ぷん、二ふん、三ぷんのち一大いちだい衝突しようとつまぬかれぬ運命うんめい
剛一はムンズとばかりに梅子の手を握りつ「姉さん、僕は常に篠田さんの写真にむかつて『兄さん』と小声で呼んで見るんですよ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「も一ツ」と今度は徳二郎がついでやつたのを女は又もや一呼吸ひといきに飮み干して月にむかつて酒氣をほつと吐いた。
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
一行驚喜けうきして曰く之れ即ち会津街道なりと、人影を見ざるもすでに村里にるのおもひをなせり、歓呼くわんこして一行の無事ぶじしゆくす、昨暮遠望えんばうしたる一小板屋は尚之より岩代の方角にむかつて一里余のとほきに在り
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
松本はがい一咳いちがいしつ「我が鍛工かぢこう組合の評議員篠田長二君の身上について、一個の動議を提出するんですから、先づ同君にむかつて暫時退席を要求致します」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
篠田はつて聖書を読み、祈祷きたうを捧げ、今宵こよひの珍客なる少年少女にむかつて勧話の口を開けり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)