入交いれかわ)” の例文
どうも、剥身屋の荷をかばうと、その唐桟の袖が雨垂あまだれに濡れる。私は外套で入交いれかわって、からかさをたたんだ。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「さぞまあ、ねえ、どうもまあ、」とばかり見惚みとれていたのが、あわただしく心付いて、庭下駄をひっかけると客の背後うしろ入交いれかわって、吹雪込むかどの戸を二重ふたえながら手早くさした。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と清葉は半ば独言ひとりごとに云うと、色傘を上へ取って身繕いをするさまして、も一度あとを見送りそうな気構えに、さらさらと二返ふたかえし、褄を返して、火の番の羽目を出たが、入交いれかわって
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、入交いれかわるのに、隣の客と顔が合うから、私は裏梯子うらばしごを下りて、鉢前はちさきへちょっと立った。……
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
逡巡しりごみをする五助に入交いれかわって作平、突然いきなり手を懸けると、が忘れたか戸締とじまりがないので、硝子窓がらすまどをあけてまたいで入ると、雪あかりの上、月がさすので、明かに見えた真鍮しんちゆうの大薬鑵。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「はゝ、気まゝにするがい、——らば入交いれかわつて、……武士さむらい武士さむらい、愚僧にすがれ。」
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
すっと入交いれかわったのが、の大きい、色の白い、年の若い、あれは何と云うのか、引緊ひきしまったスカートで、肩がふわりと胴が細って、腰の肉置ししおき、しかも、そのゆたかなのがりんりんとしている。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
入交いれかわりにとまりに来る渡者の稼ぎ高に割当てて、小遣こづかいって、屋根代を入れさせる。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
入交いれかわって、歯を染めた、陰気な大年増が襖際ふすまぎわへ来て、瓶掛びんかけに炭を継いで、茶道具を揃えて銀瓶を掛けた。そこが水屋のように出来ていて、それから大廊下へ出入口に立てたのがくだんの金屏風。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
道中記をけるもものうし、る時帳場で声を懸けたのも、座敷へ案内をしたのも、浴衣を持って来たのも、お背中を流しましょうと言ったのも、皆手隙てすきと見えて、一人々々入交いれかわったが、根津
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
膝ですべって、津山が立つのと入交いれかわって、男衆が階子段はしごだんの口でお辞儀をして
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と舞妓が入交いれかわって、トンと揚幕の方から路之助の脊筋をたたいた。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、入交いれかわって、お綾は今の身になった。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)