不愉快ふゆかい)” の例文
測る道具と測る品物が往々にしてことなるので、この二者を混同するとつまらぬことにあらそいが起こり、たがいに不愉快ふゆかいの念をしょうずるにいたる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
あには、会社かいしゃで、うえのものが権力けんりょくによって、したのものをおさえつけようとするのをて、なにより不愉快ふゆかいおもったらしいのでした。
兄の声 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「どうもこれはずいぶん不愉快ふゆかいな事件だね。よろしい。そんならフクジロがマッチを十円で売るということを知っているものは手をあげ。」
そのみずかかんじた不愉快ふゆかいのこと、おろか人々ひとびと自分じぶん狂人視きょうじんししているこんなまちから、すこしでもたらば、ともおもうのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
どうにも心の置場のないような不愉快ふゆかいを感じるが、それを書いてしまうとさっぱりする、さっぱりした心持で何かをあらたに受けいれようとする構えに
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
すでに他人の忠勇ちゅうゆうみするときは、同時にみずからかえりみていささ不愉快ふゆかいを感ずるもまた人生の至情しじょうまぬかるべからざるところなれば、その心事を推察すいさつするに
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しかし津村の気持では、自分の母が狭斜きょうしゃちまたに生い立った人であると云う事実は、ただなつかしさを増すばかりで別に不名誉ふめいよとも不愉快ふゆかいとも感じなかった。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
おおきな汽船だけに、まア、リフトの昇降時しょうこうじにかんじる、不愉快ふゆかいさといったほどのものでしたが、やはり甲板に出てくる人の数は少なく、喫煙室スモオキングルウムで、麻雀マアジャンでもするか
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「ウム、かれらのさくにのせられると思えば不愉快ふゆかいだが、得物えものやわざは末葉まつようのこと、承知しょうちしてくれよう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
相手が動物になってしまうと、もう、与平にとって、哀れでも不憫でもなくなる。意識はひどくさえざえとして来て、自分で自分がしまいには不愉快ふゆかいになって来るのだ。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
彼は又、社交会話に洒落しゃれ(彼によればその大部分が、不愉快ふゆかい駄洒落だじゃれでしかなかったが)
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それは予定の行事を予定に従ってすすめて行けばよかったし、そして、それだけのことは、自分の心をいつわっているという不愉快ふゆかいな自覚なしにもできることだったからである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
いよいよと時日がせまった二三日前になって、何か考えなければならないという気が少ししたのですが、やはり考えるのが不愉快ふゆかいなので、とうとう絵をいてらしてしまいました。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だが心配の重さだけは忘れているまも心にのこっていて、なんとなく不愉快ふゆかいであった。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
かの女は、華美でも洗練されてるし、我儘わがままでも卒直そっちょくな戸崎夫人のうわさは不愉快ふゆかいでなかった。そういう甲野氏もひがやすいに似ず、ずかずか言われる戸崎夫人をちょいちょいたずねるらしかった。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
文麻呂は清原のえ切らぬ態度を不愉快ふゆかいに感ずる。励ますように………
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
かれは、勇気ゆうき情熱じょうねつもなければ、なまなかの良心りょうしんは、ただみずからを不愉快ふゆかいにするばかりで、ようのないものだとさとりました。
考えこじき (新字新仮名) / 小川未明(著)
このわれわれのやった大しばいについて不愉快ふゆかいなお方はどうか祭司次長にその攻撃こうげきの矢を向けて下さい。私はごく気の弱い一信者ですから。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
わが輩は常に女といえばただちに母ということを頭脳に思い出すから、いちがいに女という文字を嘲笑的ちょうしょうてきに用うる人多きを見て、不愉快ふゆかいに感ずる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
不愉快ふゆかいそのもののような気持で、ベッドに引繰ひっくり返ったまま、眼を閉じていると、松山さんは、なおも、手近にあった通俗雑誌を手にとり、ぼくの横にわざと、ごろりと寝て
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
かれ何時いつ囚人しゅうじん出会でっくわせば、同情どうじょう不愉快ふゆかいかんたれるのであるが、そのはまたどううものか、なんともわれぬ一しゅのいやな感覚かんかくが、つねにもあらずむらむらといて
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「出来上ったンなら早く持っておいで、友情のない奴の品物なンぞ見るのも不愉快ふゆかいだ」
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
たとえば目の不良なる人はつねに欝陶うっとうしく感じ、したがってますます不愉快ふゆかいを覚え、人の前に出るのをいとうにいたる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ぼくは懸命けんめいになればなるほど拙劣せつれつなのを知りながら「実はあなたが昨夜、熊本さんについて見たことを、あなたの胸だけにしまっておいてもらいたいのです」と言いかければ、彼は不愉快ふゆかいそうにかん高く
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
けちをつけられたのが不愉快ふゆかいだったのであります。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かれるさえ不愉快ふゆかいかんじていたからで。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)