万物ばんぶつ)” の例文
旧字:萬物
薔薇ばらにも豌豆えんどうにも数限りもなく虫が涌く。地は限りなく草をやす。四囲あたりの自然に攻め立てられて、万物ばんぶつ霊殿れいどのも小さくなってしまいそうだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
陰中いんちゆうやうつゝみ、陽中やうちゆういんいだくは天地定理中ぢやうりちゆう定格ぢやうかく也。老子経らうしきやう第四十二しやういはく万物ばんぶつ陰而いんをおびてやうをいだく沖気以ちゆうきもつてくわをなすといへり。
そして真赤な熔岩の流れが、山を埋め、野を埋めて、万物ばんぶつを焼きつくした揚句あげく、海に達するまでは、その怒りが解けない。
黒い月の世界 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
この時代、天下を横行した錬金術れんきんじゅつというのは、すこぶる大きな目標を持っていました。万物ばんぶつ何でもきんに変えるというのです。
科学が臍を曲げた話 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
「おたがいに、愛情あいじょうがあり、しんせつだったから、万物ばんぶつちょうといわれたが、いまは、残忍ざんにんなこと、ほかの動物どうぶつでないから、かえって、悪魔あくまちかいといえるだろう。」と、S少年エスしょうねんがいいました。
太陽と星の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あけぼのの光の東より開くと共に、万物ばんぶつ皆生きて動き出ずるを見ん。
銀座の朝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
わたしを中に万物ばんぶつ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
しかれども陰陽和合して人をなすゆゑ、男に無用の両乳りやうちゝありて女の陰にかたどり、女に不要ふよう陰舌いんぜつありて男にかたどる。気中に活動はたらく万物ばんぶつもるる事なし。
「人間は万物ばんぶつ霊長れいちょうである」といばっていた人間も、ここではあわれな二流三流の生物でしかない。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
つきは、太陽たいようとはまったく気性きしょうがちがっています。そして、万物ばんぶつ運命うんめいをつかさどるちからは、いまこそ太陽たいようのようになくても、むかしは、えらかったものだそうです。そのことをつきかっておはなしなさい。
負傷した線路と月 (新字新仮名) / 小川未明(著)
天地呼吸こきふして万物ばんぶつ生育そだつる也。天地の呼吸こきふつねうしなふ時は暑寒あつささむさ時におうぜず、大風大雨其余そのよさま/″\の天へんあるは天地のやめる也。天に九ツのだんあり、これを九天きうてんといふ。
(だが、万物ばんぶつ霊長れいちょうたる人間が、そうむざむざと死滅してなるものか!)
火星兵団 (新字新仮名) / 海野十三(著)
人間は、広い意味にいて万物ばんぶつ霊長れいちょうだと云えるのじゃ
遊星植民説 (新字新仮名) / 海野十三(著)