一雨ひとあめ)” の例文
河の流れが一雨ひとあめごとに変るようでは、滅多めったなところへ風呂を建てる訳にも行くまい。現に窓の前のがけなども水にだいぶん喰われている。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ちっともかぜがないな、一雨ひとあめくるといいのだが、毎日まいにちりそうになるけれどらない。」と、ひとりごとのように、伯父おじさんは、いいました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
屋根やねいても、いたつても、一雨ひとあめつよくかゝつて、水嵩みづかさすと、一堪ひとたまりもなく押流おしながすさうで、いつもうしたあからさまなていだとふ。——
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「なんの坂本までは、見えているほど近い距離。一雨ひとあめあるとも、一鞭ひとむちの間に着いてしまう。——懸念すな。懸念すな」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして一雨ひとあめ降ればすぐに雑草が芽を吹きやがて花を咲かせ、忽ちにして蝶々ちょうちょう蜻蛉とんぼやきりぎりすの飛んだりねたりする野原になってしまうと、外囲そとがこいはあってもないと同然
焼けしうへ一雨ひとあめそそぐゆふだちのしめり涼しく土の香の立つ
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
「おい、一雨ひとあめやってくるぜ。いまぴかりと光ったよ」
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
恋の一雨ひとあめぬれまさり
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
去年きよねんことである。一雨ひとあめに、打水うちみづに、朝夕あさゆふ濡色ぬれいろこひしくる、かわいた七月しちぐわつのはじめであつた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「きのうきょうは、はなのさかりだけれど、一雨ひとあめくれば、みんなってしまいますよ。」
夢のような昼と晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ああ、唄じゃねえが、一雨ひとあめしいぜ……」
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)