黐棹もちざお)” の例文
云われて小四郎振り返って見ると、かし材五寸の厚味を持った厳重を極わめた板壁が、ヘナヘナ竹の黐棹もちざおの先にブッツリ貫かれているではないか。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ジイジイ鳴噪なきさわいでも黐棹もちざおの先へも掛けないで、けろりと返さぬのがおきまりであった。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
頭巾、袖無し、裁着たっつけ黐棹もちざお、甚太郎が船に乗っていた。いずれも衣裳は新調で、黐棹ばかりが元のままであった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「どうもいけねえ。眼付かったらしい」甚太郎は黐棹もちざおを握り締めたが、つと姿を現わした。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)