馬小舎うまごや)” の例文
宿に着いたリンカンは附近あたりを見廻して、不機嫌な顔をした。部屋は馬小舎うまごやのやうに薄汚かつた。その上暖炉ストーヴには小さな火しか燃えてゐなかつた。
のちになってその画家は、その土地のことに明るい人から、昔、そのあたりは馬小舎うまごやがあったと云うことを聞いたが、それ以外には何も判らなかった。
馬の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
馬小舎うまごやのやうに、境の壁がついたて式になつてゐたので、どんな物音も筒抜けに聞える粗末な部屋だつた。眼を閉ぢるとすぐ、さうした二人でだけ知つてゐる思ひ出が、瞼の中に走つて来た。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)