のり)” の例文
退職官吏だった、彼の父は多少の貯金の利子を除けば、一年に五百円の恩給に女中とも家族五人の口をのりして行かなければならなかった。
十八歳にして父を喪いその家を嗣いだが、主家の権臣一柳左京の憎むところとなり、遂に主家を去って赤坂の某処に住し家塾を開き、かたわら板下はんしたを書いてわずかに口をのりしていた。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)