金胎こんたい)” の例文
ここは全く金胎こんたい両部の霊場である。山嶽を道場とする「ぎょうの世界」である。神と仏とのまじり合った深秘な異教の支配するところである。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
金胎こんたい両部の信仰のいかに神秘であるかを語って見せているようなその天狗の女性の方の白粉しろいものをほどこした面でも、そこに残存するものはもはや過去の形見だ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これが末世まっせの証拠だと思うんです。金胎こんたい両部なぞの教えになると、実際ひどい。仏の力にすがることによって、はじめてこの国の神も救われると説くじゃありませんか。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そして、もう一度彼が大平峠を越して帰って行こうとするころには、気の早い一部の同門の人たちが本地垂跡ほんじすいじゃくの説や金胎こんたい両部の打破を叫び、すでにすでに祖先葬祭の改革に着手するのを見た。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
金胎こんたい両部、あるいは神仏同体がこの国人の長い信仰で、人心を導くにはそれもよい方法とされたものか、翁が菩提寺ぼだいじはもちろん、郷里にある寺々の由緒をことごとく調査して仏を大切に取り扱い
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)