重々ちょうちょう)” の例文
十一月二十七日は、朝からむしむしと暑苦あつくるしい日であった。空は重々ちょうちょうたる密雲におおわれて、遠くで雷鳴らいめいがいんいんとひびき、なんとなく大あらしの前兆ぜんちょうをつげる空もようである。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
あの樹は、霊木れいぼくじゃ。この家から必ず貴人が生れる。重々ちょうちょう車蓋しゃがいのような枝が皆、そういってわしへ囁いた。……遠くない、この春。桑の葉が青々とつく頃になると、いい友達が訪ねてくるよ。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
島をかこむ海水と平和湖の水色ばかりである、北南西の三方はみな重々ちょうちょうたる密雲でとざされ、東の一角だけが、断雲だんうんのあいだに、三五の星がさんぜんとかがやいているばかりである。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)