邂逅めぐりあい)” の例文
後になって考えると、それが彼の上京後唯一度の父子の邂逅めぐりあいであったのである。それぎり彼は父を見なかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
親子久しぶりでの邂逅めぐりあいである。死んだと思ったのが生きていたのである。……しばらく、二人は抱き合ったまま、一言も云わずに立っていた。涙が頬をつたわっている。
年が若いだけに、思わぬ邂逅めぐりあいから妙に心をそそられたところへ、女の涙にれた顔を見て、大事を抱えた身とは知りながら、ついそれを忘れるような気持にもなったものらしい。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
この避けがたい、しかも偶然な邂逅めぐりあいは再び近づくまいと思う婦人に逢って了った。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
小父さんの笑った眼からは何時いつの間にか涙が流れて来た。兄の下宿の方ではそれほどに思わなかった捨吉も、田辺の家の人達の前にお母さんを連れて来て見て、不思議な親子の邂逅めぐりあいを感知した。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)