誨淫かいいん)” の例文
また自分たちが猥雑わいざつな心もちにとらわれやすいものだから、男女なんにょの情さえ書いてあれば、どんな書物でも、すぐ誨淫かいいんの書にしてしまう。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
『絵入教訓近道』は題名の如く春水が教訓を標榜した草双紙であるが、然し此場合の教訓は誨淫かいいんの書といわれる人情本を勧善懲悪などというよりも名実相副うものであろう。
春水と三馬 (新字新仮名) / 桑木厳翼(著)
源氏物語を誨淫かいいんの書と考え、その作者紫式部の死後百年程経て、式部はああ言ういけないそらごとを書いた為に地獄へちて苦しんでいる、と言うことさえ信じられていた程である。
反省の文学源氏物語 (新字新仮名) / 折口信夫(著)