観潮楼かんちょうろう)” の例文
私は先生と鴎外先生とが或る日観潮楼かんちょうろうに於ける会合の席上、私の「麒麟」だか「少年」だかを褒めてをられたと云ふ話を聞いてゐた。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
二階の欄干らんかんたたずむと市中の屋根を越して遥に海が見えるとやら、然るが故に先生はこの楼を観潮楼かんちょうろうと名付けられたのだと私は聞伝えている。
したがって諸先輩の消息を知ることもまれになって行ったが、おそらく鴎外漁史なぞはあの通り休息することを知らないような人だから、当時その書斎とする観潮楼かんちょうろうの窓から
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
観潮楼かんちょうろうの先生もかつて『染めちがえ』と題する短篇小説に、西鶴のような文章で浴衣と柳橋やなぎばしの女の恋を書かれた事があった。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)