複雑いりく)” の例文
旧字:複雜
仮に小鰭の鮨売がこの事件に関係があるとするなら、これには、裏になにか複雑いりくんだアヤがなければならぬはず。
顎十郎捕物帳:22 小鰭の鮨 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
心の恐ろしく複雑いりくんで、人の口裏を察したり、眼顔を読むことの驚くほどはしこい、それでいてあどけないような、何処までも情け深そうな、たより無気なげで人に憐れを催さすような
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
ふッふッふ……ところで、はなはだ遺憾にぞんずるが、杉の市は直接さしあたっての下手人げしにんじゃねえ。どうしてどうして、これにゃア複雑いりくんだアヤがある。こいつを、ほぐせたら大したもんだ。
顎十郎捕物帳:06 三人目 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)