蛸市たこいち)” の例文
お父さんはこの二十年の間、蛸市たこいちとか赤鬼とか、世間樣から存分なことをいはれながら、一心不亂にお金を溜めました。
蛸市たこいちとか何とか言いやがって、この俺を虫ケラのように思った長屋の奴らや、俺に足腰をませて大きな面をした町内の旦那衆を見返してやるから、——というのが口癖で、好きなものも食わず
「親分さん、錢形の親分さんでせう。よく存じてゐますよ、隣の蛸市たこいちが、私が一番怪しいつて言つたでせう。五貫目もある小判入りの柱が私に持てるか持てないか、考へても見て下さいよ、ね、親分さん」
「あ、蛸市たこいちか。するとねえさんはおはまさんかい、道理で——」
「あ、蛸市たこいちか。すると姐さんはお濱さんかい、道理で——」
「親分さん、銭形の親分さんでしょう。よく存じていますよ、隣の蛸市たこいちが、私が一番怪しいって言ったでしょう、五貫目もある小判入の柱が私に持てるか持てないか、考えても見て下さいよ、ね、親分さん」