虚無ニヒル)” の例文
虚無ニヒルなどと簡単に片づけられそうもないんです。あのトカトントンの幻聴は、虚無ニヒルをさえ打ちこわしてしまうのです。
トカトントン (新字新仮名) / 太宰治(著)
一切に絶望し一切を虚無ニヒルと見流し、既に詩作さへ無意味だと感じて居たのだけれどもその心を裏切るせいの未練が死を戀うて蟲けらのやうに生きる『墓標』を書き
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
……むかし、虚無ニヒルの向うに何があるかという幼稚な議論をしたことがあったな。……君は虚無の向うに虚無の深淵だけだ、といった。僕は虚無の向うに愛がある、といった覚えがある。
金狼 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
遊民の虚無ニヒル。それが、東京の一隅にはじめて家を持った時の、私の姿だ。