ひこばえ)” の例文
なよなよと萌え出した優雅なひこばえの葉は、微かな微かな空気の流動と自分の鼓動とのしおらしい合奏につれて、目にもとまらぬ舞を舞う。
地は饒なり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
大木、ひこばえ灌木かんぼく、深く交差した枝、高い草、皆陰惨な存在を保っている。荒々しい群れはそこに、目に見えざるものが突然姿を現わすのを見る。
横倒しに倒れた大きな直い幹から直角に伸び出でた枝ともひこばえともつかぬ二三本がそれぞれ一抱え以上の大きな木となって並び立っているのもある。
みなかみ紀行 (新字新仮名) / 若山牧水(著)
ひこばえのたぐひて行かむ人なしにひとり越ゆれば惱ましき坂
長塚節歌集:1 上 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そこにある思想の本質では明治二十年以前にあった婦人の新しい社会生活への動きが幹で截られたあとに生えたひこばえにすぎず、しかもひこばえたる自身の本質について作者は全く無自覚であったということは
婦人と文学 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)