艶事つやごと)” の例文
何か道ならぬ艶事つやごと、ある影の中の女、ある媾曳あいびき、ある秘密、そういうことに違いないと彼女は思い、少しばかり探ってみるのも当然だと考えた。
その感傷的な誘引を、クリストフと自分との艶事つやごとに比較することなどは、彼女の頭に浮かびもしなかった。
ここにおいて飛耳長目ひじちょうもくの徒は忽ちわが身辺を揣摩しまして艶事つやごとあるものとなした。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ジルノルマン氏は彼がバビローヌ街の兵営の付近でやってる艶事つやごとの話を聞き飽きてしまった。その上ジルノルマン中尉は、時々三色の帽章をつけ軍服を着てやってきた。
彼女は彼女のいわゆるクリストフとグラチアとの艶事つやごとなるものをよく見てとっていた——(彼女の眼はなんでも見てとった。)そして艶事は彼女の畑だったので、非常に面白がった。
ジルノルマン氏は微笑して言った、「なあに、ちょうど娘のあとを追う年頃だ。」時とすると彼はつけ加えた、「いやはや、ちょっとした艶事つやごとと思っていたが、どうも本気の沙汰さたらしいぞ。」