聖母マリヤ)” の例文
「天国ではお酒が高いに相違ない。蝋燭は以前お寺で聖母マリヤ様の前にあつたのを盗んだから、へさなくつちや。」
聖母マリヤは、すこし身体を前に傾け、慈愛に満ちた眼差でベルナアルさんの顔を見おろしている。ベルナアルさんの出任せなおしゃべりに、いちいち優しくうなずいているようにも見えた。
葡萄蔓の束 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
いかにも貧血的な相をした聖母マリヤが左端に立ち、右方には旧約聖書の聖人達が集っていて、それがみなてのひらで両眼を覆い、その間に立ったエホバが、性慾的な眼でじいっと聖母マリヤみつめている。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)