老衲わし)” の例文
もはや帰ってもよい、しかし今日は老僧も閑暇ひまで退屈なれば茶話しの相手になってしばらくいてくれ、浮世の噂なんど老衲わしに聞かせてくれぬか
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
立派な考へを蓄へてゐらるゝ、学徒どもの示しにも為たいやうな、老衲わしも思はず涙のこぼれました、五十分一の雛形とやらも是非見にまゐりませう
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
さあ十兵衞殿とやら老衲わしについて此方へ可来おいで、とんだ気の毒な目に遇はせました、と万人に尊敬うやまひ慕はるゝ人は又格別の心の行き方、未学を軽んぜず下司をも侮らず
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
何か知らねど老衲わしをばこわいものなぞと思わず、遠慮を忘れてゆるりと話をするがよい、庫裡の土間に坐りうで動かずにいた様子では、何か深う思い詰めて来たことであろう
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ああ殊勝な心がけを持って居らるる、立派な考えをたくわえていらるる、学徒どもの示しにもしたいような、老衲わしも思わず涙のこぼれました、五十分一の雛形とやらも是非見にまいりましょう
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と藪から棒を突き出したやうに尻もつたてゝ声の調子も不揃に、辛くも胸にあることを額やら腋の下の汗と共に絞り出せば、上人おもはず笑を催され、何か知らねど老衲わしをば怖いものなぞと思はず
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)