俺はまた、羅生門河岸らしやうもんがしから轉げ込んだ、膏藥かうやくだらけの年明けかと思つて、宜い加減膽をつぶしたよ。
「朝つぱらから惚氣のろけの賣り込みかい、道理で近頃は姿を見せないと思つたよ。ところで相手は誰だ、横町の師匠ししやうか、羅生門河岸らしやうもんがし怪物くわいぶつか、それとも煮賣屋のお勘子か——」
「有難い仕合せで。その代り羅生門河岸らしやうもんがしへ行くと、青大將臭いのが五、六人首つ玉にかじりつく」
羅生門河岸らしやうもんがしの青大將臭せえのとは違つて、大年増から中年増、新造から小娘まで揃ひも揃つたり、箱から出し立ての、雁皮がんぴを脱がせたばかりと言つた、樟腦臭しやうなうくさい綺麗首が六人
「誰だ、あの娘てえのは。羅生門河岸らしやうもんがしあたりに、又筋のよくねえのを拵へたのか」
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)