繅車いとぐるま)” の例文
二台の人力車がらくに行き違うだけの道を隔てて、向いの家で糸を繅車いとぐるまの音が、ぶうんぶうんと聞える。
二人の友 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
家によりては異樣に高き梯のいたゞきに門口を開けるあり。その内を望めば、繅車いとぐるまの前に坐せる老女あり。側なる石垣の上よりは黄に熟したる木の實の重げにりたる枝さし出でたるべし。
マルガレエテ一人繅車いとぐるまの傍に坐しゐる。
繅車いとぐるまの音のする家から、太鼓の音のする家に移ったのである。京町は小倉の遊女町の裏通になっていて、絶えず三味線と太鼓が聞えていた。この家へもF君は度々話しに来た。
二人の友 (新字新仮名) / 森鴎外(著)