竹町たけちょう)” の例文
わたくしは震災の数日前下谷竹町たけちょうの邸に伯父文豹を訪うた時、その客室に「遷喬書屋。丹治瑩斎。」となした古びた一匾額の懸けられてあるのを見た。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
下谷竹町たけちょうのとある路地の奥、何を考えるともなく、娘に導かれて、ツイこんな所まで来てしまったのです。
悪人の娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
竹町たけちょうは佐竹の原が形を変えて市街となったので、それで竹町というのであって、佐竹の屋敷を取り払った跡が佐竹の原です。東南に堀があって、南方は佐竹の表門で、その前が三味線堀しゃみせんぼりです。
光明氏はその頃下谷竹町たけちょう生駒いこま様の屋敷中に立派な邸宅を構え、弟子の七、八人も使っておられ、既に立派な先生として世に立っておられたのであるが、そんなことまではその時は知らず、ただ
「伊三兄哥は、両国から出せ。俺と石原の兄哥は、竹町たけちょうから出して逆に行く。——あかりの点いている船に用事はねえ、大きな船も調べるだけ無駄だ、灯の無い軽舸はしけでそっと漕いでいるのがあったら逃がすな」