立役たてやく)” の例文
世には絶倫の器量を持ちながら、とうてい脇師以上には出られない人があり、欠点だらけでも、立役たてやくの巻軸に生れついたような人もある。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
立役たてやくは幕明きから舞台に出ているものではない。観客が待ちに待って、待ちくたぶれそうになった時分に、しずしずと乗り出して、舞台の空気を思うさま動かさねばならぬのだ。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そこで子役を見ても、女形おやまを見ても立役たてやくを見ても、どういうたちの役者が何を唱っているのか知らずに、大勢が入り乱れたり、二三人が打合ったり、そんなことを見ている間に九時から十時になった。
村芝居 (新字新仮名) / 魯迅(著)