竈屋かまや)” の例文
おはまが竈屋かまやから答える。兄夫婦は湯に呼ばれていった。省作は小座敷へはいって今日の新聞を見る。小説と雑報とはどうかこうか読めた。
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
竈屋かまやの方では、下女げじょが火を焚き始めた。豆殻まめがらをたくのでパチパチパチ盛んに音がする。鶏もいつのまか降りて羽ばたきする。コウコウ牝鶏めんどりが鳴く。
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
竈屋かまやのほうでは、かまだきを燃す音や味噌する音が始まった。予も子どもをつれて裏の田んぼへ出た。
紅黄録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
裏口より竈屋かまやのほうへまわると兄は鯰を料理していた。予はよほど神経疲労したものか、兄が鯰を切ってそのうす赤い血を洗ってる光景までがどうしても現実とは思えない。
紅黄録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
おはまは竈屋かまやへゆく。省作は考えた。兄は一に身上二に丹精で小むずかしい事ばかりいうてわからない人とのみ思っていたに、今日の話はなかなかわかってる。なるほどこれがえいのだ。
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)