高柳君は気味の悪い笑いをらした。時雨しぐれがはらはらと降って来る。からたちでらの門の扉に碧巌録提唱へきがんろくていしょうりつけた紙が際立きわだって白く見える。女学校から生徒がぞろぞろ出てくる。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)