癩者らいしゃ)” の例文
宿のあるじに聞くと、日本人の吉利支丹の癩者らいしゃが百三十人も乗っているので、入港を許可するかしないかで、むずかしい掛合になっているということであった。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ジュリアンは身を落して渡守わたしもりになり、癩者らいしゃを渡して、偉大なる空想の天に救い上げられるのである。
ところがいよいよ最後のひとりになったとき、それは身体の崩れかかった癩者らいしゃであった。臭気は湯殿にちて、さすがの御誓いもこの最後の一人で破れるかと思われた。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
昔はこの辺に癩者らいしゃなど住んでいたのではなかろうか。築地の破れのひまよりは、秋草のしずかにゆらぐ様などみえるのを期待したが、予期に反しておむつの乾してあるのがみえた。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)