彼岸ひがんにちかい秋の町を、かねをたたいて歩く男があった。そのゴ——ンというさびしいは、いま、甲府塗師屋町こうふぬしやまちの四ツかどをでて、にぎやかで道のせまいさか軒下のきしたをたどってくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)