生糸いと)” の例文
桑原治平は生糸いと商人だから糸を送り、橋本幸三郎が金を出して呉れましたから、立派に機屋を出して大層栄えました、末お芽出度いお話でございます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
黒眼鏡をかけて、糸織の袷羽織あわせばおりに、角帯をしめて、茶の中折帽、東京から来て今生糸いと相場ほうへ思惑をしてみたが、ちょっと、追敷おいじきが足らなくなったからと、軽く言っているのだがね……
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「大隈さんに、石炭は売りつけられんよ、運動してもらうんじゃ、海軍の方へ。こんどの遠洋航海の艦隊だけでも、たいへんなもんだよ。また、生糸いとの方でも、いろいろといい便宜がある」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうでしょう、私も、きょうの夕刻の七時までには、どうしても、生糸いとの方へ、追敷しきがなければならない場合ですから、即金ならば、たくさんは困るが、ある程度まで見きりますが」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜかって? 知れたことよ、井伊掃部頭様いいかもんのかみさまが殺されたじゃあねえか。港を開いて、どしどし貿易をやらせろという御方針でいらっしった大老様の首が飛んだんだ。生糸いとなんざ一遍にガラ落ちよ。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)