溝渠みぞ)” の例文
しかし細君の父と彼との交情に、自然の溝渠みぞが出来たのは、やはり父の重きを置き過ぎている手腕の結果としか彼には思えなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして家の者らを批判しなくても、自分と彼らとを隔つる溝渠みぞを感じていた。彼は確かにそれを誇張して見ていたであろう。
自然は五十年の歳月のへだたりをもって、ジャン・ヴァルジャンとコゼットとの間に深い溝渠みぞを置いていた。しかし運命はその溝渠を埋めてしまった。
どこの屋敷でも、すこし大きな構えとなると、かならず塀のまわりに溝渠みぞがあり水がながれている。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また一面には学者と世俗との間に存する誤解の溝渠みぞを埋むる端緒ともなさんとするものなり。
自然現象の予報 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
かくして細君の父と彼との間には自然の造った溝渠みぞが次第に出来上った。彼に対する細君の態度もあんにそれを手伝ったには相違なかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)