涿県たくけん)” の例文
「じゃあ、わしはここから一人別れて、ひとまず郷里の涿県たくけんへ行くからね、いずれまた、一度この五台山下へ戻って来るが」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……で先頃から、この涿県たくけんに流れてきて、山野のいのこを狩って肉をほふり、それを市にひさいで露命をつないでおるような状態です。おわらい下さい。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これから南へ行けば広宗。北へさしてゆけば、郷里涿県たくけんの方角へ近づきます。いずれを選びますか」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中興の祖劉貞りゅうていは、ひとたびは、涿県たくけん陸城亭侯りくじょうていこうに封ぜられましたが、家運つたなく、以後流落して、臣の代にいたりましては、さらに、祖先の名を辱めるのみであります。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こういう寒村の窮民を見ると、玄徳は、自分の故郷涿県たくけんの田舎と、その頃の貧乏生活を思い出す……。同時に、この地上に満ち満ちている幾億の貧乏人の宿命を思いやらずにいられない。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
涿県たくけんの一寒村から身を起して今日に至るまでも、よく節義を持して、風雲にのぞんでも功を急がず、悪名を流さず、いつも関羽や張飛に、「われわれの兄貴は、すこし時勢向きでない」と
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)