流寓るぐう)” の例文
知らぬ他郷に流寓るぐうするはずもないのですから、来り人とあってはどうで碌なものでないと思われても、彼らにとってはまったく致し方がなかったのです。
孤高独行、故郷や肉親の縁も薄く、生涯を雲や水にまかせて流寓るぐうをかさねて来た武蔵も、もうその時は五十歳の半ばを過ぎ鬢髪びんぱつには白い霜が見えていたであろう。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
病人の左右の耳から青龍が出て口より火焔かえんを吐き、清行に向って云うのに、自分は生前尊閣の諷諫ふうかんを用いなかったゝめに左遷のき目を見、筑紫の空に流寓るぐうして果敢はかない最後を遂げたのであるが、今
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
こうして拝見していると、頻りと、所有欲のようなものが動いて、自分も一つ、こんな名幅を持ってみたいという気持はして来ますが——持ったところで、家もなし、席も定まらぬ流寓るぐうの武者修行
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)