桃園ももぞの)” の例文
前々将軍家時代から久しく営裡えいりに権勢をふるッていましたが、お代がわり以来、風向きがよくないので、早くも身を退く汐時しおどきと感じて、中野桃園ももぞのに隠邸をしつらえて、その日
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戸外そとには霧のような雨が降っていた。庭へおりると婢がさきにたって後園の方へ往った。其処には桃園ももぞのがあって、青葉の葉陰に小さな実の見えるその樹の一株に青い紐を懸けて縊死いししている者があった。
竇氏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)