有徳人うとくじん)” の例文
「飛んでも無い。小森屋さんは本郷でも聞えた有徳人うとくじんで、私共はその日暮しの浪人者、提灯に釣鐘でございます」
勝てば勝ったで、一躍、有徳人うとくじん(分限者)になりあがるし、負ければ負けたで、なんとかしなければという一念から、必死の戦争をして高名手柄のチャンスを掴むのである。
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
……有徳人うとくじんのやうなかれの、水のやうに澄み切つた心境よ。……
七代目坂東三津五郎 (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
祖先はかつての吉原の創始者で、浪人者ではあつたにしても、名だたる有徳人うとくじんで、金もあり、人望もあり、何代か土地に住み着いて、申分のない人柄ひとがらだつたのです。
う聴くと、有徳人うとくじんの佐渡屋平左衛門も、まったく八方敵の中にいるわけです。
う聽くと、有徳人うとくじんの佐渡屋平左衞門も、全く八方敵の中に居るわけです。
「しないよ。向うは有徳人うとくじん、私は貧乏人、付き合う方が不思議なくらいだ」
「しないよ。向うは有徳人うとくじん、私は貧乏人、附き合ふ方が不思議なくらゐだ」
「寛永寺御出入りの呉服屋ですよ。主人の萬兵衞は五十過ぎの有徳人うとくじんで、腰折れの一つもひねる仁體ですが、殺されたのは主人のめひで、娘のやうに育てられたお喜代といふ十九の厄。滅法良い娘ですぜ、もつたいない」