旅館やど)” の例文
眉を落して、形をかえて、貴方の奥さまになって隠れていましても、人出入の激しい旅館やどでは、ちっとも心が落着きませんから、こうして道に迷っております。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ある日の事、小林氏は築地の旅館やどを出て、三宅坂に知辺しるべの人を訪ねた。帰りは夜に入つた。
旅館やどへ帰るには、遅すぎるし、歩いて時をつぶすには、早すぎた。治郎吉は、手拭にくるんだ重い金を、ふところ手で、へその上に抑えながら、天満河岸をぶらついて、川の中をのぞいて歩いた。
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)