悪所あくしょ)” の例文
ところが夢酔が悪所あくしょで顔をうって遊ぶために金モウケに精根かたむけて精進し、折にふれて編みだした工夫に富んだ発明というものは涙ぐましいほど独創的で計画的であったが
安吾史譚:05 勝夢酔 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
甚吉君にお会いになったら、今後はなるべく悪所あくしょぐるいをやめよと伝えてください……
現場の写真 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
うちの次男坊の根性を入れかえて、悪所あくしょ通いをやめさせてくだすったのは、どなただと思う。みんな泰軒先生じゃないか。その先生の一大事に、婆あだって引っこんでいられますか。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
たとえば、ぼくらの若い日といえど、ひと口に吉原とは、ぼる所、だます所、恐い所の「悪所あくしょ」と呼びなされていたものだが、私はかつて、いちどもそんな目にあったことはなかった。
紅梅の客 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は猫のいなくなったことを悔むようにさえなり、そのころ行きつけの悪所あくしょでそれの代りになる同じ種類の、またいくらか似たような毛並のものがいないかと自分のまわりを捜すようにもなった。
黒猫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)