忸々なれ/\)” の例文
そして富江の阿婆摺あばずれた調子、殊にも信吾に對する忸々なれ/\しい態度は、日頃富江を心に輕んじてゐる智惠子をして多少の不快を感ぜしめぬ譯にいかなつた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
子供の時分からの馴染のような顔付をした斯の訪問者が、復た忸々なれ/\しく私の側へ来た。正直に言うと、この足繁く訪ねて来る客の顔を見る度に、私は「冬」以上の醜さを感じて居た。
三人の訪問者 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
路で逢ふ人には、何日いつになく忸々なれ/\しく此方こつちから優しい聲を懸けた。作右衛門店にも寄つて、お八重は帉帨はんけちを二枚買つて、一枚はお定に呉れた。何處ともない笑聲、子供の泣く聲もする。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)