しかし何だか口がさびしいと見えて、しきりに縄暖簾なわのれんや、お煮〆にしめや、御中食所おちゅうじきどころが気にかかる。相手の長蔵さんがまた申し合せたように右左とのぞき込むので、こっちはますます食意地くいいじが張ってくる。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)