彌縫びほう)” の例文
新字:弥縫
そしてもう一度なんとかして自分の失敗を彌縫びほうする試みでもしようと思ったのか、小走りに車の手前まで駈けて来て、そこにだまったまま立ち停った。
卑怯者 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
この彌縫びほう策は翌日になって予科全体をすっかり怒らせる結果になった。カキが公然と予科を騙したこと、子供扱いにしたことが予科のみんなをおこらせた。
海流 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
概論すれば彼が再度の投獄は、周布、長井等との衝突といわんより、むしろ彌縫びほう的改革主義と、打破的革命主義との衝突より来りし結果といわざるべからず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
あれやこれやと彌縫びほうするためにだけ利用されるという惨めな状態に陥ったのであった。
それは結局二人の間を彌縫びほうができないほど離してしまうだけのものだったから。そしてこの老年の父をそれほどの目に遇わせても平気でいられるだけの自信がまだ彼のほうにもできてはいなかった。
親子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
私たち婦人は、現支配者たちがひきおこした戦争惨禍の責任を糊塗しようとして、政府の無能を彌縫びほうしようとして、云々する産児制限に、決して無条件に母なる肉体をさらそうとはしないのである。
私たちの建設 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)