庚申塚かうしんづか)” の例文
庚申塚かうしんづかの寅松の氣の良さに打ち負かされて、此處では一番寅松を立てて、蔭の仕事をしてやらうと、平次らしく思ひ定めたのでせう。
仕方がないから歩いて歸つたが、後で若い者から聽くと、何んでも病人らしい者を私の駕籠に積んで、無理に巣鴨の庚申塚かうしんづかまで運んだといふことだ。
「下手人の疑ひを、その扱帶の持主にかけるためだ、——現に庚申塚かうしんづかの親分は、お君さんを縛らうとしたやうだが」
「私は一寸駕籠町まで行つて參りますが、旦那は庚申塚かうしんづかの番所でお待ち下さいませんか、友吉に案内させますが」
伜は大阪へ行つて居ると言はれて、庚申塚かうしんづかの赤塚樣から、がつかりして歸りかけた時でございました。
「さう願へれば、有難いことですが——幸ひ庚申塚かうしんづかには、私の別懇べつこんにして居る家もございます。八五郎親分のお宿をさせて、精一杯の御馳走をさせることにいたしませう」
親分の用事で庚申塚かうしんづかの邊まで行つた歸り、フト、畑の中の人だかりを見付けて、鼻の下を長くして嗅ぎ廻つた擧句、半刻ばかりの間にこれだけのネタを擧げてしまひました。
「待つて下さい、庚申塚かうしんづかの親分、——私は人に聽いたことだが、締め殺して暫らく放つて置くと締めた紐の跡が浮き出るといふことだ。お百の首の跡は本當にこの眞田紐だらうか」
庚申塚かうしんづかから少し手前、黒木長者のいかめしい土塀の外に、五六本の雜木が繁つて、その中に、一基の地藏尊、鼻も耳も缺け乍ら、慈眼を垂れた、まことに目出度き相好さうがうの佛樣が祀られて居りました。
驅け付けた庚申塚かうしんづかの泰道も、最早手の下しやうはありません。
「おや、庚申塚かうしんづか泰道たいだうが飛んで行きますよ」