左見右見とみこうみ)” の例文
そういう二人を左見右見とみこうみしながら、頼母は酸味ある微笑をしたが、やがて提げていた刀のこじりで主税の肩をコツコツと突き
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
左見右見とみこうみ、気は惹かれているようなのですが、なかなか商いにはならなかったのでございました。
蒲団 (新字新仮名) / 橘外男(著)
左見右見とみこうみ、天井の方を向いて前足をのしたかと思うと、竜之助の方へ向って、のそのそと歩いて来るのを見たから、それをカセに斎藤が、話の中へ猫を織り交ぜてみたのか
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
是等の大美術書を下駄で踏むのがアテナの神に対して済まないような気持がしながら左見右見とみこうみとしていると、丸善第一のビブリオグラアーたるKが焼灰で真黒になった草履穿きで煙の中を徜徉いつゝ
彼はそれを掴み出して、左見右見とみこうみして感にたえているうちに、見れば見る程、今死骸の二の腕から切離されたとしか思えない余りの生々しさに、段々不気味になって、ポイと道端へ放り出してしまった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)